社会不適合

17才ぼっち

硝子の塔の殺人(ネタバレあり感想)

確かbookoffで買ったと思います。当時「新本格派ミステリ」と銘打って大々的に売り出されてたのを本屋で見てたんで、ちょうどいいと手に取りました。

 

僕のイメージ、知念さんっていうと医療ミステリとTwitterの人でした。昔読んだことのある作品は、ムゲンとアイと仮面病棟。

どちらも医者としての経験を存分に発揮したミステリーで、今回のような硬派なミステリーをやるのは意外でしたね。

 

読み終わった後、素直に嫉妬したのを覚えてます。

新本格のミステリもやれるんだ、と。

 

天は彼に二物を与えたそうです。週に一回医者やりながら、ここまでのミステリーが書けるとは。正直今まで読んだ、知念作品と比べてもとびきりの完成度でした。

 

普通プロローグで主人公が捕まっていたら、主人公が捕まるまでを書いた物語なんだって思いませんか。

 

ミステリにありがちな予定調和な展開。

碧月夜のメタ的発言。

現実的でない構造の建物。

 

作中「まるでミステリの世界に迷い込んだようだ」という発言がありました。それもそのはず本当に推理小説の世界に迷い込んだわけですから。

 

コンセプトがまず面白い。
山奥の硝子の塔に取り残された、多種多様な登場人物たち。その時点でクローズドサークルものだなって思い込みが働きますよね。

 

傑作だっていう触れ込みのわりには、魅力のない密室。

杜撰なトリック。

おそらく読んだ方の大半が、序中盤の展開にはがっかりしたんじゃないですか。
僕は思いました。どこが新本格なのかと。

 

実際のところ、その思い込みに目線が逸らされた。読み進めるなかで考えていたのは、どうやって殺したのかばかり。

まさか本当は死んでいなかったとは。

ましてや真犯人が名探偵自身だったとは。

まるで思いもしなかった。

 

推理小説に詳しいからこそ偏ってしまう大前提を利用されて、まんまと騙されました。

 

なんにせよ面白かった。

序中盤にかけて積もっていく違和感が、トリックが明かされたとき全て完璧に説明できてしまう。その感動を久しぶりに味わった気がします。

 

終わり方も良かった。続編がすでに予定されているそうですが、どうなるんでしょう。どう楽しませてくれるんでしょう。とても楽しみです。